日本が生んだ世界に誇れる食文化のひとつが「醤油」。海外でもソイソースの名前で広く知られ、特に人気の高い北米ではその年間販売量は日本に迫る勢いだとか。
他の一般的な調味料、塩や砂糖のように、醤油もその製法や材料によっていくつかの種類に分けることができますが、普段は料理に使う「醤油」と刺身にかける「さしみ醤油」くらいざっくりとしか区別しませんよね。せっかく日本人として生まれ育ったんですから、この機会に醤油の種類についてちょっと勉強してみましょう。
こいくち
国内の醤油生産量のうち80%を占めるのがこのタイプ。大豆と砕いた小麦を共に時間をかけて発酵・熟成させているため、深みのある香りと濃い色に仕上がっています。
煮物などの調理用にも使え、「少し味が足りないかな」というときに食卓でちょっと足すのにも便利ですね。一般的に醤油といえばこのタイプを指すので、迷ったときはこれを使いましょう。
うすくち
「普通の醤油より味が薄いからうすくち醤油」という勘違いもよくありますが、塩分はむしろこいくち醤油より高め。味が薄いわけでもありません。発酵時間を短めに抑え、最後に水あめを加えるという製法で淡い色合いと控えめな香りに仕上げられたうすくち醤油。野菜の煮物や煮魚など、あまり色を付けたくない料理に向いています。うすくち醤油が好まれる関西では、うどんのスープも淡い色をしていますよね。
たまり
初めて味わった人はびっくりするほどの濃厚な甘みが特徴のお醤油。小麦をほとんど使わずほぼ大豆のみで作られているため、醤油というよりはソースに近いこってりとした舌触り。絶妙な甘辛さときれいな焼き色がつくことから、おせんべいのつけ焼きや魚の照り焼におすすめです。中部地方や山陰地方では「お刺身にはこれ!」という家庭が多いそうですよ。
さいしこみ
「再仕込み」という名前の由来は、完成前の非加熱の醤油を使って醤油を仕込むというその製法からくるもの。醤油を使って醤油を仕込むという、手間暇かけた贅沢な一品です。
たまり醤油に近い濃厚さが特徴で、こちらも刺身に使えば醤油の味と香り、舌触りをあますことなく楽しめます。国内での生産量は1%とごくわずかながらも、全国各地で作られているそうです。
しろ
見た目はビールのような淡い色、塩分は5種類の中で最も高い18%、何故か糖分も15%というちょっと不思議なお醤油です。小瓶が500円程度というお手頃価格で売られているので、スーパーで手にとってみたことがある人もいるかもしれませんね。発酵時間をうすくち醤油よりもさらに短くし、たまり醤油とは反対に原料のほとんどが小麦というしろ醤油。醤油独特のコクや香りはありませんが、しっかりとした塩味をつけつつ色味は残したくない料理(茶わん蒸しやお吸い物)にはうってつけ。ほんのりした甘みで料理が上品な風合いに仕上がるので、料亭でもよく使われているそうですよ。
おわりに
製法によって分類される醤油は、「こいくち」「うすくち」「たまり」「さいしこみ」「しろ」の5つ。でもこのどれにも当てはまらない醤油もスーパーに売られていますよね。例えば「さしみ醤油」や「うまくち」「あまくち」という名前の醤油の中身は何なんだろう?とちょっと気になりませんか?
これはその地方や販売メーカーによって違うというのが正解。甘い醤油が好まれる九州ではさしみ醤油の中身はたいてい「さいしこみ」で、「たまり」を「あまくち」として販売しているメーカーもあります。配合は違っても醤油の原料はほぼ共通して大豆、塩、小麦ですから、成分表示だけで見分けるのは難しいようです。
ちょっと気になる醤油を見つけたら、料理の幅を広げると思って小瓶から試してみるのも良いかもしれませんよ。