お料理の基本「さしすせそ」の中で、もっとも欠かせないものはなんでしょうか。
おそらくほとんどの人が「塩」と答えるでしょう。たしかに、作る料理によっては砂糖やお酢はなくても全く困りませんが、塩がなければほとんどの料理は味付けができず、言葉通り味気ない仕上がりになってしまいますよね。
塩は世界中どこに行っても使われているスタンダードな調味料のひとつ。
そして、味噌に赤と白があるように塩の種類も1つではないんです。製法や原料が違えば味や風味も大きく異なってくる「塩」を使いわけ、それぞれの持ち味を料理に活かしてやりましょう。
和食全般に最適、ミネラル豊富な海塩!
四方を海に囲まれた日本では、塩田に海水を引き込んで塩を抽出する「天日製法」がよく使われていました。ですが、あまりに効率が悪いため、現在は海水を窯で煮詰める「平釜製法」も使われています。
前者は天日塩、後者は釜焚塩、他にも製法の違う再精製塩やイオン膜塩もありますが、日本で市販されている調理用の塩のほとんどは海水を原料にした「海塩」にあたります。
海水に含まれるミネラル成分がバランス良く抽出されている海塩。酸味や苦み、甘味などさまざまな風味が混じりあったまろやかな辛さを楽しめます。あまり塩辛さを主張し過ぎないので、素材の味を活かしたい煮物や優しい味付けの料理向き。また、ナトリウム濃度が低めで水に溶けやすいため、料理初心者にも使いやすいお塩です。
パンチの効いた岩塩はパワフルな食材におすすめ
海から離れているヨーロッパ内陸部などでは、日本のように塩をとるために海水をわざわざ運んでくることはできません。
そこでヨーロッパの国々では、地層化した岩を砕いたり溶かしたりして抽出した「岩塩」を使ってきました。岩塩の名産地ヒマラヤでは、ピンクやブラック、クリスタル、レッドなどさまざまな色の岩塩が採掘されています。
岩塩の最大の特徴はその力強い塩味。これは海水に含まれるミネラル分のうち、特に固まりやすいカルシウムとナトリウムが多く含まれているため。シンプルでストレートな辛さをもつ岩塩は強めの食材によく合いますので、牛肉や濃厚なソース作りに、またちょっと癖のある羊肉もうまく料理してくれるでしょう。
ちょっとレアな湖塩はさっぱり系料理に合う!
ウユニ湖や死海など、世界でも数えるほどしか存在しない塩湖。ここで抽出された塩を「湖塩」と言います。ただし、塩湖は地殻変動のときに海が陸に閉じ込められたものだったり、たまたま海水が流れ込んできて塩分濃度が高くなったりしてできたものなので、元をただせば原料は海水。湖によって塩分濃度や溶け込んでいるミネラル分の成分は異なり、そこからとれる湖塩は岩塩以上にバラエティ豊かです。
ミネラルだけでなく有機物を含む湖塩は、やわらかく甘みすら感じる不思議な塩味。塩ベースの煮込み料理やマリネなどさっぱり系の料理に使えば、その奥行きのある味を存分に楽しむことができます。
おわりに
ちなみに日本で「塩」といえば一般的には海塩のことを指しますが、実は世界の多くの国々で使われているのは岩塩。私たちが塩味と思っているものは、岩塩に慣れている人にはいまいち物足りない味なのかもしれませんね。
世界共通の調味料だと思っていた塩も実はこんなにバラエティ豊か。岩塩や湖塩も輸入食料品店で購入できるので、機会があれば一度試してみてください。
まろやかな海塩、パワフルな岩塩、深みのある湖塩。ひと舐めペロリとするだけではっきりその違いを感じ取ることができて、「これを料理に使えばどれだけ味に違いが出てくるんだろう」と考えて、きっとわくわくしてきますよ。