飲料の知識

意外と知られていない日本島しょ部の水道事情

「島しょ部」という単語をご存知ですか?島しょ部とは大小さまざまな島が集まっている地域のことです。東京の伊豆や南太平洋のパラオなどを「諸島」と称しますが、それらのように島が集まっている場所のことを指しています。今回は東京都の「伊豆諸島」「長崎県島しょ部」にスポットを当てて解説いたします。各地域の水質の特徴やご自身がお住まいの地域との違いに注目して見てみてくださいね。

離島にとっての水は高級品

離島にとっての水は高級品
島しょ部などの離島は「のどかで物価も安く、住みやすい」「将来住むには最適な場所」といったイメージをお持ちの方が多いかと思いますが、実際離島に住むことはとても難しいようです。

その理由としてはライフラインである電気・ガス・水道の確保が大変であるということが挙げられます。中でも水は液体であり、飲料としても生活用水としても使用することから多量に必要なことから運搬や移動が難しく、入手することは簡単ではありません。

そのため、飲料用水に関してはその島内で完全に自給自足を行わなければならないとされています。「島民は比較的少人数だし、自給自足も難しくないのでは?」と思われるかもしれませんが、飲料水のもととなる降水量が豊富だったとしても、一年中同じように雨が降ることはありません。

降水量は季節ごとにばらつきがあるうえに、島であるがゆえの特性として面積が小さいために降った雨は長くとどまることがなく、あっという間に海に流失してしまいます。
ですので、梅雨の時期に降った雨をためておくという行為も難しくなってくるのです。島民の水需要をまかなえるだけの大きな水源、または人口湖水を持たない限りは安定した飲料用水を確保することは困難とされているようです。

伊豆諸島の水は塩辛い?

伊豆諸島の水は塩辛い?
上記した通り、離島での水確保は簡単なことではありませんが、伊豆諸島は比較的水に恵まれている地域とされています。そんな伊豆諸島の水には味に少し特徴が。諸島のなかのふたつの島をピックアップして紹介します。

自然の宝庫、八丈島

>自然の宝庫、八丈島
自然豊富で、観光名所も多い八丈島。国内・海外のどちらからも観光客が多く訪れる人気の観光地です。水海山という山があり、そこには雨がよく降るため水がたくさん蓄えられているとされています。このように水源がしっかりしているため、水不足に陥ることはなさそうです。湧水も豊富で離島の中では水がおいしいと評判の島です。

伊豆諸島最大の島、大島

伊豆諸島最大の島、大島
首都圏からとても近い大島。海洋の影響を受け、気温の差が小さく、黒潮の流れのため温暖多湿な海洋性気候です。そんな大島の水は少し塩辛い特徴があるようです。その理由は水源にあるようで、水質を調べてみたところ、火山と海水の両方の影響があるとされています。とはいえ、大島のHPでは「水道水は飲める」と明記してあるので、人体に影響はないと考えられます。

日本屈指の離島県、長崎

日本屈指の離島県、長崎
長崎県は対馬島、壱岐島、五島列島、平戸諸島をはじめ、588の島々を有している離島県です。四面環海という自然条件を背負わされた島は、孤立しているために自給自足が生活の条件となります。そんな長崎県のうち、五島列島である久賀島と赤島にスポットを当てて見ていきましょう。

五島列島3番目の大きさを誇る久賀島

五島列島3番目の大きさを誇る久賀島
久賀島は、長崎県五島列島にある馬蹄形の美しい島です。 やぶ椿が島中に繁茂し、季節になると美しい花を咲かせ 島中を赤く彩ります。

一夜にして沈んだといわれる高麗島伝説や鬼伝説など、 伝説・伝承 の多い島でもあります。そんな久賀島の水道事情は、6か所に飲料供給施設が備えられています。これは50人以上100人未満の給水対象地域人口を持つ地域に対して設置されるもので、各集落で管理されています。

久賀島の水道普及率は約80%。それらの地域の中でも全く水道を利用していない家庭もあるようです。そういった人たちは現在でも井戸水や湧水を利用して生活をしています。昔ながらの風習と歴史を大切にしながら生活していることが見て取れますね。

人口なんと約15人!漁業が盛んな赤島

人口なんと約15人!漁業が盛んな赤島
なんといっても驚きなのはその人口。2012年度は50~70代の男女15人のみが島民という、小さな島です。耕地が少ないため、現在は周辺の天然の好漁場で伊勢海老などの漁船漁業が営まれています。
そんな赤島には水道が通っていません。そのため住民や観光客などは各戸に備え付けられている雨水をためるタンクの水を利用して生活をしています。そのため、月に一回、同じ五島列島に属している福江島に水を購入しに行く島民もいるようです。
もちろん雨水は一度煮沸し、殺菌してから使用するため問題はありませんが、心配な方はご自身でミネラルウォーターを持っていくと安心でしょう。

おわりに

水道が通っている島しょ部のほとんどでは、生活のために水道を利用する際、必ず申請が必要となります。また、離島において水は本当に高価なものなので本州に比べると料金もお高めです。もちろん赤島のように完全に自給自足で水を確保している場合は料金がかかりませんが、無駄遣いをすることもできませんよね。水道設備が整っている環境が当たり前になっていると忘れてしまいますが、水は貴重な資源です。一度その大切さを知るためにも、島しょ部地域に足を運んでみるのも良いかもしれません。