おいしい料理を作るために必要なものってなんだと思いますか?例えば新鮮な旬の食材やこだわりの調味料、それを調理する人の腕やとっておきのレシピ。
もちろんどれも欠かすことはできませんが、意外と「水」には無関心な人が多いようです。
よく考えたらお米を炊くときや煮物を作るときは、その食材の量よりもっとたくさんの水が必要。これが料理の出来栄えに影響しないわけはありません。
料理をおいしく作るためには、その素材や調理法に適した「水」についての知識を身につけておきたいものですね。
代表的な2つのお水「硬水」と「軟水」の使い分け方について見ていきましょう。
「軟水」と「硬水」はどんな料理に向いている?
私たちが調理や飲料用に使っている水は、その硬度(1ℓ中のMgとCaの含有量で計算)によって「軟水」と「硬水」にわけることができます。硬水や軟水といった概念がなかった昔の人にとって、その土地の水を使ってその土地で採れた食材を調理するのは当たりまえのことでした。そうして料理されて美味しかったものが、伝統料理や郷土料理といったかたちで現代まで伝わっているわけですね。
そう考えると、天然から湧き出る軟水で生活してきた日本の料理(和食)は、軟水で調理するのに向いているといえるでしょう。同じ理由でフランス料理やイタリア料理などの西洋料理は硬水での調理が適していると考えられています。
素材を引き立ててくれる軟水は「和食」向き
硬水と軟水、2種類の水を飲み比べたときに「まろやか」と感じる人が多いのは軟水の方。その理由はほとんどミネラル成分が含まれていないためなのですが、同時にこれが和食調理に向いている理由でもあります。
言い方を変えれば「不純物」があまり入っていない軟水。食材に浸透しやすく、食材から出る成分が溶け出しやすい性質をもっています。
煮物に使えば水分をたっぷり含んだ野菜は芯から柔らかくなり、出汁をとるときに使えば昆布やカツオから出るうま味がしっかり溶け込んで風味豊かな香りに。もちろんお米も軟水で炊けばふっくらと炊きあがります。
このように軟水は素材を活かした和食と相性の良い性質をもっているのです。
素材を変化させる硬水は「洋食」向き
それではもう一方の硬水が西洋料理向きだといわれているのはなぜでしょうか。
硬水に含まれるカルシウムが、タンパク質や食物繊維などさまざまな成分と結びつく性質をもっているからです。スペアリブを煮込むときに使えばお肉のタンパク質を柔らかくし、おまけに臭みも消してくれます。
また、デンプンと結びつけば反対に硬くなるので、パスタを弾力のある歯ごたえに仕上げたいときにぴったりです。
反対に、根菜をたっぷり使ったポトフなどは相性がいまいち。カルシウムが食物繊維と結びついて芯が残り、期待通りのほくほく感に仕上がりません。
他にも「お米と硬水」、「癖の強い肉と軟水」など、特に相性の悪い組み合わせがいくつか存在します。
おわりに
「レシピ通りに作ったのに何故かおいしくできなかった…」
今までにそんな経験をしたことはありませんか?
おそらくほとんどの人が水道水(軟水)で料理することに慣れているはずですから、それは硬水を使ったほうがおいしく作れる料理だったのかもしれません。もちろんレシピにはいちいち「硬水」や「軟水」とは書いていませんが、調理法や食材によってどちらを使うべきか見極められるようになれば、もっとおいしい料理を作れそうですね。逆に水選びを間違えれば、おいしく仕上がるどころか素材の持ち味を殺してしまいかねません。
「水」もおいしい料理を作るための大切な材料のひとつ。肉や魚など、他の食材を選ぶときと同じようにこだわってみましょう。